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目次
事の発端
2015年5月、ボンサイラボ様より極秘の任務を頂戴致しました。
「三菱化学グループのバーベイタムさんと共同開発している新しいフィラメントを試してもらえないか」と。
テスト結果はずっとボンサイラボ様との秘密のやり取りだったのですが、デアゴスティーニのサイトでこのフィラメントが予約販売され始めましたので、ボンサイラボ様の許可を得て、テスト時の結果を公表致します。
結論先に言っちゃうけど、とってもとっても凄いフィラメントです。
6月にまずはクリアをテスト
2015年6月、色の付いていないクリアなフィラメントのサンプルを頂いたので、テスト開始。
推奨造形温度は 200〜220℃ ということだったので、その中間の 210℃ でテスト造形。積層ピッチは 0.3mm。
美しい・・・。
3Dプリンタをあまり扱ったことのない方にとっては何が?と疑問に思われるかもしれませんが、まず、設定にそれほど気を使っていないのにもかかわらず、垂れと糸引きがほとんどありません。
垂れというのは角度のある部分に出やすい、材料を一度溶かして積み上げていく熱溶解積層法式では起こりがちな造形物表面の問題。
垂れを防止するには造形温度を調整したり、射出された PLA フィラメントを急冷させたりするのですが、特に何も考えなくても上記画像のような垂れはほとんど発生しませんでした。
また、糸引きというのは3Dプリンタのノズルが造形物の離れた場所に移動する際に余剰なフィラメントが出てしまって起こる問題。
糸引きを防止するためには造形温度を調整したり、リトラクトの設定値を調整したりするのですが、こちらも特に何も考えなくても糸引きがほとんどありませんでした。
フィラメントとしてかなり優秀な部類、少なくとも私が試した PLA の中では最も優秀な性能です。
透明度も素晴らしく、これまで最も透明度が高かったスチレン・ブタジエンフィラメントと比べても遜色ない透明度があります。
左が今回のフィラメント、右がスチレン・ブタジエンフィラメント。スチレン・ブタジエンフィラメントのほうが僅かに透明度が高いです。
透明度が高いので、コップを造型してみました。
美しい・・・。
透明度だけでなく、光沢もあるのが優秀な証拠。
わかりにくいけど水を入れてみました。
水を入れてもこぼれないコップが作れる。そう、BS01 ならね。
7月に白と黄色をテスト
そして2015年7月に、先ほどのクリアに色を付けたフィラメントのサンプルを頂きました。白と黄色。
クリアと全く同じ設定条件でテスト造形。
アーチになっている部分だけ少し垂れましたが、ここは他のフィラメントでもよく垂れる部分なので、ちょっと設定を調整すれば良いレベルです。
先ほどのクリアと並べてみるとこんな感じ。
他のフィラメントだとクリアに比べて色が入るとフィラメントの性質が落ちたりするものもありますが、全くそんなことは無く。むしろちょっと良くなってるんじゃないかというレベルで性能の良いフィラメントです。
同じく「高機能フィラメント」に分類される PolyPlus の黒と比べてみても全く遜色ない出来栄え。
でも、私がこのフィラメントを「最も優秀」と称する理由は、表題の通り、その研磨性にあります。
研磨性の良さに気付いたのは8月
2015年8月、ボンサイラボさんから「サンプルフィラメントを使ってこの3Dモデルをプリントしてもらえませんか」と依頼があり、快く引き受けて造形、どうせなら綺麗に仕上げてやろうとちょっと磨いてみたところ、その研磨性の良さを発見。
一般に PLA フィラメントで造形された出力物は ABS フィラメントと比べて切削・研磨性に劣り、当ブログでも「研磨できないのならコーティングすればいいじゃない」と試行錯誤してきましたが、この PLA フィラメントはそんな努力を軽く飛び越えてとんでもない研磨性を備えてくれました。
例えばこんな感じの造形物上面の溝も・・・
簡単に研磨できます。
これまで「研磨できる PLA フィラメント」というのは自分が知るかぎりでは PolyMax だけでしたが、この研磨性の良さは PolyMax を遥かに凌ぐものです。
「これ、研磨できますよ」とボンサイラボさんに伝えたところ、開発側は研磨性に関しては認識していないとのことでした。
狙わずにこの研磨性を出すってどんだけ優秀な開発陣やねん。
研磨が容易ということは塗装も容易
PLA は塗装するのもなかなか困難でした。積層痕が残っている状態だと当然、以下の写真のように塗装のノリも悪いので、表面にコート剤を塗ったりパテで補修したりと、多くの方が色んな方法を試してきました。
でも研磨ができるということは表面処理をしなくても塗装のノリが良い、ということ。
うん、ごめんね。塗装に関してはマジで素人なんだ。塗装が下手とかそういうツッコミはマジ勘弁です。
でも、研磨した部分の塗装が楽なのは本当です。塗装技術の高い人なら、サーフェイサーとか塗布して綺麗に塗れると思います。
今回塗ったのはアクリルガッシュです。アクリル塗料が乗れば、ラッカー系塗料やエナメル系塗料も乗ると思っています。理屈としては、ラッカー系塗料は溶剤を含んでいるので、下地を溶かして食い付くきますが、水性アクリル塗料は下地を基本的に溶かさないので、アクリルが乗るならラッカーは乗るし、エナメルも乗ると思っています。たぶん。
前述しましたが塗装に関してはマジで素人なので詳しい方、ツッコミお願い致します。
10月、秘密解禁と共に新色をテスト
10月、デアゴスティーニのサイトで予約販売が開始されたのと同時に、デアゴスティーニ限定色「うすだいだい色」の最終サンプルを頂いたので、それもテストしてみました。色は2種類。このうちどちらかが製品になるそうです。
セクシー注意。
今は「肌色」と言わないそうですが、我々世代にはこの色は「肌色」なので、この色を活かせる3Dモデルデータを造形してみました。
セクシー注意。
どのご家庭にもある塗装済みのおっぱいと比較してみました。そのままでもなかなか良い発色です。
サンプルとして頂いたもう一色もいい感じの発色ですが、BS01 のコミュニティ内でも先ほどの色のほうが人気でした。私もそう思います。
セクシー注意。
塗装済みの脚と比べてみたのがこちら。
そして、300番のサンドペーパーのみで研磨してみたのがこちら。
画像右側の積層痕がほぼ消えているのがおわかりでしょうか。デジカメのマクロ機能で撮影しているので、うっすらと積層痕が見えますが、指で触るレベルでは完全にツルツルです。
300番のサンドペーパーだけでこれだけ研磨できるので、「PLA だけど研磨できる」と明言してしまって良いと思います。
まとめ
デアゴスティーニのサイトではこのバーベイタムのフィラメントとユニチカのフィラメントの二種類が売られていますが、ボンサイラボ推奨のフィラメントはバーベイタムのほうです。お間違えなく。
最後に。
「安心してください、研磨できますよ。」
ごめん、これが言いたかったんだ。
コメントはこちらから
コメント
初めまして。歯科技工士で3Dプリンターを扱っている者です。
いつも勉強させて頂いております!
ありがとうございます!
by 荒川 愛子 2015年10月10日 11:30 PM
コメントありがとうございます。
同じ歯科業界の方の参考になるとは恐縮です(^_^;)
今後も良い記事をお届けできればと思っております〜
by はまでん 2015年10月10日 11:40 PM
荒川さんさらっとコメントしてますが、3Dプリンタと歯科に関係する会社の社長じゃないですかw
by 肉 2015年10月12日 12:16 PM
さっそくこれはブログのネタに出来ると思って荒川様に連絡をとった件(ぇ
by はまでん 2015年10月12日 5:41 PM
[…] たので、そのまましばらくABSを使っていたのですが、どうにも頭が痛くなってしまった(←比喩ではなく実際に)ので、研磨できると噂のPLA、Verbatim(バーベイタム)に切り替えました。 […]
by 最近の自分のBS01まとめ | MUDAなことをしよう。 2018年8月12日 4:51 PM