以前、ロストワックスに使えるという鋳造用フィラメントが「うーん・・・」な話、という内容の記事を書きましたが、実際に試してみないことには、ということで、取り寄せて試してみました。
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目次
推奨プリント温度は低め
通常のフィラメントは ABS で 230℃ 前後、PLA で 200℃ 前後ですが、MOLDLAY は推奨プリント温度が 170〜180℃ とかなり低め。さらに、ヒートベッドは 40℃「以下」で、という条件付き。かなり特殊な条件のフィラメントと言えます。
プリント難易度は高め
特殊な温度条件もさることながら、ノズルから射出された直後がかなり柔らかいため、造形物の形状によってはかなりプリント難度が上がります。
公式サイトには「プリント速度は PLA と同等」と書かれていますが、プリント速度は遅めにした方が良いと思います。
歯の被せ物を作ってみることにした
一応、歯医者が書いているブログということで、歯の被せ物(メタルクラウン)を作ってみることにしました。
実際の歯の大きさよりも大きめに作ってあります。
積層ピッチは 0.1 mm。これでもかなり頑張りましたが、拡大するとやはり積層痕がハッキリと見えます。
鋳造した金属はコバルトクロム合金
今回、鋳造した金属はコバ ルトクロム合金という、コバルト、クロム、モリブデンを主成分とした歯科用合金です。
一般的には入れ歯の金具部分などに使われ、いわゆる歯の被せ物に使われるものではありません。融点は 1,400℃ 弱なので、鋳型を作るための鋳型材(埋没材)はリン酸塩系埋没材を使います。
そして鋳造してみたのがこちら。
たぶん、歯科関係の方が見たら「なんて汚い鋳造面なんだ!」と思われることでしょう。そりゃそうです。
拡大してみると、はっきりと積層痕が表面に現れているのがわかると思います。
プリント造形物の表面性状が、そのまま鋳造物の表面に現れているわけです。
熱溶解積層3Dプリンタの限界
一般に、熱溶解積層3Dプリンタは、光造形3Dプリンタに比べ、積層痕や表面性状は綺麗ではないと言われています。
実際、私もそう思いますし、3Dプリンタを使ってロストワックス原型を作製している歯科技工所やジュエリーメーカーなどは、ほとんどが光造形3Dプリンタを使っていると聞いています。
なので、「精度が必要なロストワックス原型」を製作する目的だと、この MOLDLAY フィラメントはあまり適していないと感じます。
家庭で低溶融金属を使うのが主目的かも
270℃ で完全に融解するフィラメントなので、ご家庭のオーブンでもロストワックス原型を溶かすことが出来ます(中には 250℃ までしか上がらないオーブンもあるので注意)。
原型が綺麗に除去されればレジンだろうが金属だろうが鋳込むことができるので、低溶融金属を使うことを前提として開発されているのかもしれません。
ただ、その場合でも、高い造形難易度がありますので、比較的大きな物体を作るのに適していると思います。
表面性状に関しては、通常のワックスが表面にくっつきますし、ロストワックスを加工できる方なら綺麗にすることは可能なので、テクニック次第ですね。
最後に研磨してみた
ひどい鋳造物表面でしたが、もちろん磨けばちゃんとこんな感じになります。
こちらからは以上です。
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