珍しく?歯科の話題。とは言っても歯科用の3Dプリンタの話です。ケルン国際デンタルショーで発表されたという歯科用の3Dプリンタ「Objet260 Dental Selection 3D Printer」が出力した歯牙模型が驚きの精度だったので取り上げてみました。
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目次
きちんと歯肉と歯牙が出力されているのが凄い
実際にプリントされたという模型の写真がこちら。
正直、驚いています。こんなレベルの歯牙模型は、射出成形でしか見たことがなかったからです。
それどころか、射出成形よりも優れている部分もあるのです。
単純な「ピンク」と「白」の組み合わせではない
プレスリリースにて提供されていた写真でしか判断できないのですが、切り取って拡大してみた写真を見てみると・・・。
一般の方には「白い歯」としか映らないかもしれませんが、歯科関係者が見るとこの歯牙の部分は驚きを隠せません。
鏡でご自身の歯をよく見ていただくとわかると思いますが、歯は部位によって色調が全く違うのです。先端は若干透明だったり、中央にかけて黄色味が混じってきたり、根元に向かうに従って明度が下がってきたり、等々。
これまで射出成形で作られた歯牙模型というのは、こういった色調を再現出来ておらず、ほとんどが「歯肉のピンク」と「歯牙の白」という2色のみで構成されたものでした。
ところが今回の模型の写真を見る限りでは、そういった歯牙の色調もきちんと再現されているのです。これには本当に驚きました。
プレスリリースによると、口腔内スキャナから読み取ったテクスチャを、歯牙と歯肉向けの専用パレットを使ってきちんと造形物に反映させるとのこと。この辺はスキャナの性能にも左右されると思います。
表面の滑沢さも凄い
業務用のお高いマシンならこの程度は当たり前なのかもしれませんが、造形物トップの表面の滑沢さも凄い。これ、研究用模型として全く問題なく使えるレベルです。
直接は治療目的に使えないが間接的には実用レベル
16ミクロンという積層ピッチは、正直驚きですし、歯科の被せ物や詰め物に求められる誤差も25ミクロン以内だったりするので、なんとなくこのまま治療に使えるんじゃないか?と思われる方もいるかもしれませんが、人の歯牙はもっともっと滑沢にできているので、残念ながらいきなりこの模型を治療目的で使うことは出来ません。
ただ、実際に被せる歯の反対の歯(例えば下の歯に被せる場合は上の歯)の模型として使う分には、充分使えるレベルに達していると思います。
しかし、技術の進歩とそれに関わる人々の努力は凄いものですね。
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コメント
お初です。本当にリアルですね。この手のプリンターは機械本体の値段も高いですが、材料費も高いんですよねえ;会社でobjet使ってますが、使わなくてもメンテでどんどん減っていきますし。他にATOMでまだ市販品には無い3Dプリンター用材料の検討(アングラテーマですが)をしています。貴殿のブログはとても読みやすくまとまっていて参考になります。
by kusa 2015年3月19日 1:57 AM
コメントありがとうございます。
お値段に関してはまだまだ庶民に手の届く範囲ではないですよね〜。
おそらくこの機種も、歯科企業や大手の歯科技工所のような規模の大きな会社向けだと思います。
3Dプリンタ材料は硬い柔らかい通電する等々様々なものが出てきていますが、もっともっと選択肢が増えるとユーザーとしてはありがたいです。
あとはお値段(^_^;)
by 3d_dent 2015年3月19日 11:50 AM
お、あとは保健制度やほてつ物材料の改正で、思ったより早く技工士はあまり要らなくなりそうですね。研磨要員でのみかぁ。
by 通 2015年3月19日 3:02 PM
コメントありがとうございます。
現状ではまだまだ歯科技工士さんが要らなくなる、ということは無いと思います。
仮に3Dプリント技術によって補綴物をプリントしても、圧縮強度などの問題で使えるものではないですし(^_^;)
ただ、こういったデジタル技術によって、現状大変なお仕事に追われている歯科技工士さんが楽になる、というのはあると思います。
大手の歯科技工所では、それまで一から行っていたワックスアップを、ワックスミリングやワックス3Dプリンタの導入により、細かい調整をするだけで良くなり、残業が減った、というお話も聞いたりしますので・・・。
by 3d_dent 2015年3月19日 7:58 PM