このブログを普段からお読み下さっている方もお忘れかもしれませんが、ワタクシ、歯医者ですので、3Dプリンタを手に入れたのは「歯科関係の器具を作りたい」というちゃんとした目的があったからなんです。決しておっぱいを造形するのが目的じゃないんですよ!
しかしワタクシ「目的のためには手段を選ばない」人間ではなく「手段のためには目的を選ばない」タイプの人間ですので、とりあえず目の前の手段(3Dプリンタの改造、新フィラメントのテスト、等)に手を出してしまっていたのですが、3Dプリンタを手に入れてから 2年余りの経験値を蓄積した結果、ようやく当初の目的の「歯科関係の器具」を作りました。
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目次
口腔リハビリとは
まだまだあまり一般的ではない言葉かもしれませんが、例えば脳梗塞の後遺症などで身体の機能の一部が麻痺して失われた方に対し、口腔領域の機能のリハビリテーションを行うことで、失われた摂食・咀嚼・嚥下機能を回復させ、栄養摂取を円滑にするとともに、全身の回復を目指すことを目的とした「リハビリのスタート地点」と呼ぶべきリハビリテーションが「口腔リハビリ」です。
自分は日本の口腔ケア・口腔リハビリの第一人者であり現在も最前線で戦っておられる黒岩恭子先生から色々とご教授頂き、訪問診療の際に活かしております。
口腔リハビリ用のトレーニングモデル
自分もまだまだ勉強中の身ではありますが、人に口腔リハビリの方法を伝える際に、実際に目の前に患者さんが居れば伝えやすいですが、そうでない場合(講演や勉強会の場など)は、なかなか伝えにくいものです。
そこで、高齢者を想定した無歯顎(歯が全く無い顎)の模型に、舌部分を足したトレーニングモデルを製作しようと思い立ちました。
無歯顎骨を用意
以前、明成化学の ABS フィラメントを試してみた際に造形した下顎骨。これを元に製作していくことにしました。
舌部分を用意
骨の部分は CT のデータとして明瞭な部分なので扱いやすいのですが、軟組織である舌やその周囲の部分は CT では不明瞭ですし、MRI のデータから舌の部分だけを切り出すのもなかなか大変です。さて、どうしたものか。
吐くのを我慢しながら自ら型取り
歯医者で型取りしたことの有る方はわかるかと思いますが、あれってなかなか苦しいですよね。その型取り材を口の中いっぱいに詰め込んで型取りました。これは皆さんが経験されたことの有る型取り材の数倍の量を使いました。
正直、マジで吐くかと思った。
型取りした舌模型を下顎骨の造形物に石膏にてピッタリと合わせます。
舌部分を3Dスキャン
所有している 3Dスキャナ「Matter and Form」を使って舌模型をスキャンします。
ABS でテスト造形
造形データにおかしなところがないか、ABS で造形してみて確認。
問題は無さそうなので、次の段階へ進みます。
PolyFlex でテスト造形
フレキシブルタイプでも造形可能であることが判明したので、さらに次の段階へ進みます。
FilaFlex の赤で最終造形
とあるきっかけで WitboxJapan さんから頂いた FilaFlex の赤を用いて造形します。
無事に造形完了。
合体
造形が終わった下顎骨と舌部分を合体させるとこうなりました。
実際に触ってみるとこんな感じです。
舌全体を押したり、掴んだり、舌下筋群を押したりするトレーニングが行えるモデルが出来上がったと思っています。
まとめ
ここからさらに使いやすいように改良を加えていく予定ですが、とりあえず「歯科関連の器具を作る」という当初の目的がようやく達成されました。
現在、他にも進めている歯科関連プロジェクトがありますので、どんどんご報告していきたいと思っております。
今回出来上がったトレーニングモデルは、前述した口腔リハビリの第一人者である黒岩恭子先生にお送りさせて頂きました。
こちらからは以上です。
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